管理会社の会計課の役割と実情

前回に引き続き管理会社の会計課のお話をします。

前回の会計課の業務紹介については → コチラ

会計課は管理組合の金銭面に関わる最終の部署であることから、本来であればとても重要な部署です。

本来で…としているのは重要視していない管理会社が多いように思えるからです。

フロントの権限が強い?

これは会社あるあるかもしれませんが、営業部署(フロント部署)の権限が強いです。

営業部署は総合職として優遇されており、できる人間ほどフロント部隊に異動されます。

 →もちろん全ての会社に当てはまるわけではありませんが、私の勤務していた会社はこうでした。

管理会社の会計課は女性事務員が配置されることが多いかと思います。私の勤務していた会社では1対9の割合で9が女性でした。

また、正確に処理することが当たり前とされるため、なかなか人事評価としての業務の評価がされないことが多いかと思います。

※私の場合は、横領の不祥事を起こした会社の会計課を立て直すため専門知識を持った人間として採用されたのでこれには当てはまりませんが、合併して親会社が変わった際にはフロントへの異動の打診を受けました。

この背景から、具体的にどのような裏側になっているかというと…

全てはフロントマンが責任をもって対応する(対応作業が多く実際は対応できていません)

会計課は事務センター(与えられた資料の入力のみ)でいいとの通達がある

この業務命令を鵜呑みにするとなるとどうなるか?

  • 会計の問い合わせに対して正確に答えられない
  • 管理員・フロントのミスを指摘できず請求間違いが起こる
  • 管理員・フロント側の着服を発見できない

それぞれどういうことか説明していきます。

会計の問い合わせに対して正確に答えられない

管理組合は毎年理事が変わるところが大半で、新しい理事から会計処理方法についてよく質問があります。

簿記の知識を持っている人間からすると当たり前のことだったとしても、知識のない理事からするとなぜそのような処理になるのかがわからないということはよくあることです。

複雑な会計の問い合わせについて、フロントが全て説明対応するのですが、残念ながら説明するフロント側が理解していないことが多いです。

そのため、最終的に顧客が説明に納得できず不信感をもったまま質問が終わることが多いです。

特に現金入金額とは異なる計上金額となる、発生主義の処理で疑問に思われるお客様が多かったです。

お金に関わることですので、適正な回答ができなかった場合における信用低下は致命的になることがあり、これが原因で解約となったマンションも数件存在しています。

この件に関しては、会社が変わる前については複雑な場合の説明を会計課が理事会にいって説明をしていましたので、他の会社でも同じように会計課の責任者などが出向き説明するところはあると思います。

少なくとも私個人は、信用を売り物にしている以上、お客様に適正に説明ができるよう会計の専門知識がある人間が説明すべきであると考えています。

管理員・フロントのミスを指摘できず請求・支払い間違いが起こる

フロントの指示により会計側は入力のみを行うルールになっていることから、管理員 → フロント → 会計の間で伝達もれがあった場合、組合が区分所有者に請求する管理費等の請求漏れや組合が業者に支払う内容の間違いが生じます。

また、管理員が作成した施設の契約や譲渡の処理などに誤りがあった場合、請求を作成しないフロントマンがチェックをすることから間違いがスルーされることが多いです。

大半は未然に防いでいますが実際にあった事例として

・区分所有者へ請求する管理費等の請求開始月や終了月が間違っている

  駐車場契約解約1か月前予告などの規約内容が守られていなかったなど

・1年に1回区分所有者へ請求する駐輪場代の請求漏れ

  管理員の届け出漏れにより過去数年分の請求が漏れていた

・自治体が水道料金を改定した場合の改定漏れ

  組合が水道料金を請求している物件で管理員・フロントから連絡がなく過去の水道料金のまま請求していた

・業者への二重支払

  管理会社が払うべき下請け会社の請求書を組合の口座から支払ったうえで、さらに同じ内容の請求書を管理会社から発行し管理会社にも支払いをした

当然、実務ではこれらの原因によるものは残念ながら防げなかったものもありますが、大半については念のため管理員・フロントに確認するように指示をして未然に防いでいました。

しかし、残念ながら確認を煙たがられることも多く、またその行為自体が評価をされることなく無駄な作業をしている扱いの会社は多いかもしれません。

管理員・フロント側の着服を発見できない

会計課は顧客の金銭を扱う最終の部署ですので、与えられた資料で入力作業をするだけだった場合、管理員やフロントが着服などの不正行為をしていたときにチェックをすることができません。

管理会社の社員による着服事件は毎年おこっています → コチラ 国交省ネガティブサイト

例えば…

・管理費等を現金でも受けていた物件で、明らかに多額の未収が残っていた

 管理員が所有者から受け取った現金を着服しており、報告していなかったため多額の未収が残っていました。不審に感じた会計からの確認により発覚。

・請求書の中に明らかに私物のようなものが混じっている

 管理員がアスクルなどの注文に私物を混ぜて組合のお金で購入していました

 一見組合に関係なさそうなものでも組合指示で購入しているものはあるので確認をしなければ判断がつきません。

・振込先の業者がマンション住民である

 管理員と住民が共同で着服していた事案がありますが、純粋に善意で格安にて請け負ってくれている場合も多いので、これも確認報告しなければ発見は難しいです。

不正行為は様々な事例がありますが、不審に感じたことを確認する作業がなければ防止をすることは難しいと思います

外部監査の必要性

管理会社のミス・不正のあるなしに関わらず、結局真偽がわからないままの不信感から解約までいった管理組合が多数あります。

お金に関することですので質問に対しては正確に返答すべきですし、専門部署で責任をもってやるべきであると思いますが、現状はこのようの管理会社は多いかと思います。

管理会社が正しい処理を行っていた場合の解約であれば、結果的に管理組合は無駄な労力を使ってしまい、さらに違う管理会社においても同様のトラブルになる可能性もあります。

大手の管理会社でも不正行為が生じている中、大きい管理組合では数億円ある財産を守るために徹底した防止策が必要であると思います。

財産の防止策として、何が正しいか判断するためには税理士や公認会計士といった専門家が間に入ることが有効です。第三者として専門家に会計監査を依頼し、意見をもらったうえで公正な正しい判断ができるかと思います。

また、外部監査があることにより、着服を企てようとしているフロントからすると、外部監査をしていない別の管理組合を狙おうという考えになるかと思います。

外部監査は当事務所の業務として提供させていただいています。 ☞ コチラ 

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